そろそろ「規制派オタク」としてひとこと言っておくか

しかし、じつはこういうタイプの「オタク」はいる。たくさんいる。いまでは数は減っただろうが、昔はもっと大勢いた。今回は「ラノベ」の話だったから話題になったが、「隠れよう」、「隠れることが当然のマナーだ」と主張するこの態度は、とても既視感がある。

 

ワ、ワイのことか〜!となったので、なぜオタクなのに規制派(表現規制を肯定しているわけではなく、ゾーニングとかを肯定するレベル)と呼ばれるようになったのか、自分の論理を書いておこうと思う。簡単に書けば以下のようになる。

 

  • 表現の自由は守られるべき
  • しかし法や条例でアウトになる現実がある(わいせつ物頒布等罪など)
  • 法律は絶対ではなく可変的なものだし、複雑な対象に対して基準をすべて決めることはできない(ex.課税非課税の取り扱いに所轄税務署の判断が入る)
  • 表現チキンレースをすることは、規制側に規制の名目を与えるだけで、デメリットのほうが大きくないか?埼玉県営プール、「水着撮影会」許可条件を明確化 ポーズや着用 細かく例示 18歳未満のモデル出演や撮影禁止:東京新聞 TOKYO Web
  • 想定反論「そうやって自重したら規制派をつけあがらせるだけだ!オタクがもっと隅に追いやられる!」
  • 回答「大切にしたいのが表現それ自体なら我慢するべきだし、あなたが好きな表現を不快に思う人を否定したら憎しみの連鎖になるだけ。他人にやられて嫌だったことをやり返すな!」
  • でも復讐は気持ちいいよね わかる〜

 

そのうえで、なぜこう考えるようになったかというのを補足すると、

「表現には誰も擁護できないような最悪なものがあり、そんな最悪な表現“こそ”守るために、自主規制すべき」

だからです。

 

 

最悪な表現ってなんぞや?といえば、私のような中年オタクにわかりやすい例としては以下のような作家の作品が思いつく。

クジラックス - Wikipedia

氏賀Y太 - Wikipedia

私は上記のような作家や作風を否定する気はないし、フィクションなんだからなにをしてもいいと思ってる。

表現の自由があるのだから当たり前の話。

ただ、これらの作家や作品を実名顔出しで擁護できるか?といえば難しいというオタクがほとんどだろう。

(だからこそ東浩紀は尊敬している)

そんなオタクですら眉をひそめる、オタク仲間にもオープンにしづらいような表現を守るのは、表現の自由というお題目ではなく、「私たちは自分の意思で観たり読んだりしており、他人や子どもにはわからないようにしています」という言い訳ではないか。

それなのに広告や表紙でこちらからその存在をアピールしたら言い逃れの手段を失うわけで、それは合理的ではないだろう。

 

「そういう作品は18禁だから問題ない、いま問題なのは一般向け作品のことだ」という想定反論に回答しておく。

 

「18禁かどうかを一般人に判断できない以上、理解できる側が配慮するべきではないか」

中年オタクの笑い話として、「若いオタクはFateの原作がエロゲであることを知らない」というやつがあるが、私はこれを笑えない。現代はコンテンツがあまりにも大量に存在しているので、ある作品やイラストがどのような内容や文脈を有しているかすべて把握しているオタクはいないと思うし、いわんや一般人をや、ということになる。

オタクですら難しいことを一般人にやらせるのは酷な話で、ならオタク側が譲歩するべきだろう。

「我々は何ものも拒まないだから我々から何も奪うな」の精神でいこうぜ……

 

ただそうなると、「一般人が愛好するようなコンテンツではそんな配慮をしていないのに、我々だけが配慮しないといけないのか」という想定反論があるので回答しておく。

海燕さんもブログで言っているが、この意見には私もめちゃくちゃ共感する。

だが、一方でぼくは考える。この現代日本の「世間」にはそれこそ願望充足的としかいいようがないようにも見えるイケメンと美少女が恋をする類の恋愛小説やら映画、ドラマ、それに「あいらぶゆー、きみだけを愛している」みたいな歌詞を歌ったラブソングがあふれているわけだが、それは気持ち悪くないのか?と。

めちゃくちゃ気持ち悪いよ!ただ、そういうメインカルチャーが押し付けてくる常識や当たり前が気に食わない、馴染めないからこそ、その受け皿としてサブカルチャーがあったはずで、オタクならそういうメインカルチャーを冷笑していた気持ちがあるだろう。だからこそ言いたいのは、

 

「自分がやられて嫌なことを、他人にやり返すな」

 

ってことです。復讐はなにも産まないって、いろんなフィクションで学んだやん!

別にこれが正しいとは思わないが、こういう考えで「規制派オタク」なんて呼ばれるようになった人がうまれたと理解していただきたい


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(この気持ちもわかる、わかるけどね……)