『現代オカルトの根源 ー霊性進化論の光と闇』著:大田俊寛 読んだ

目次

はじめに
第一章 神智学の展開
1.神智学の秘密教義―ブラヴァツキー夫人
2.大師のハイアラーキー―チャールズ・リードビーター
3.キリストとアーリマンの相克―ルドルフ・シュタイナー
4.神人としてのアーリア人種―アリオゾフィ
第二章 米英のポップ・オカルティズム
1.輪廻転生と超古代史―エドガー・ケイシー
2.UFOと宇宙の哲学―ジョージ・アダムスキー
3.マヤ暦が示す2012年の終末―ホゼ・アグエイアス
4.爬虫類人陰謀論―デーヴィッド・アイク
第三章 日本の新宗教
1.日本シャンバラ化計画―オウム真理教
2.九次元霊エル・カンターレの降臨―幸福の科学
おわりに
主要参考文献一覧

■まとめ
端的に言って愉快な本ではない。
「東方の星教団」「闇の同胞団(ダーク・ブラザーフッド)」「トゥーレ協会」「爬虫類型異星人(レプティリアン)」とか中二心をくすぐるワードが満載なので、そういうのに興味があれば別だが……正直に言って何の役にも立たなそうな繰り言レベルの『聖典』たちを読み込み、淡々と要約しぶったぎっていく著者は凄いというより気味が悪くなる。
「穴を掘って埋め戻す」ひとを現実で目の当たりにしたような異様さがあってちょっと心配になるレベルだ。

それらのワンパターンな実例たちを示す中で、著者はオカルトの根源にあるという『霊性進化論』を明らかにしていく。
要約すると『人間は単なる物質的存在ではなく、その本質は霊的な次元にあり、それを進化させることで神的存在になる』といったところか。
なにいってだ、と一笑に付したくなるし、著者も霊性進化論自体は妄想の体系以外を生み出さないと結論づける。
ただ同時にこれを生み出した要因は未だ解決されていないともいう。

社会学者のマックス・ウェーバーは、『職業としての学問』(1919年)という著作において次のように述懐している。
現代の文明は「無限の進歩」を前提としているため、現代人は必然的に、進歩の過程の途中で死なざるを得ない。ゆえに、彼にとって自己の生は、常に不満足で無意味なものに映ってしまう(中略)このような状況に置かれた現代人にとって、霊性進化論の発想は、ほとんど唯一の福音と思われるほどに、優れて魅惑的に響く。肉体が潰えた後も霊魂が存在し、輪廻転生を繰り返しながら永遠に成長を続けることによって、世界の進歩とともに歩み続けることができるからである。 p241-242 おわりに より

■感想
基本的に著者の考えに大いに賛同している。
本自体は面白くないんだが、問題意識が近い気がして頑張って読んだ。なのであんまり興味がないと手に取っても読み進めるのが苦痛になりそう……

引用にもあるが、科学は進歩してるのに人間というやつは全然変わってないように思える。考え方やらは多少変わったかもしれないが基本は大人になって恋愛してセックスして子作りして死ぬというパターンの繰り返しで、『個人の進化』なんてものはない。
そんな中で『真実に目覚めて霊的に進化する』というストーリーが魅力的に聞こえるのは理解出来なくもないんではないか?

またこのような考えはみんな大好きアニメ・マンガなんかにも豊富にあるだろう。隠された能力があるとかなんとか。
そういうフィクションもまたみんなが心の中で求めている『霊性進化論』への憧れを突いてるんじゃないか?という自覚は必要なんじゃないかと思ったり。